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富山地方裁判所 昭和32年(ワ)129号 判決 1957年12月19日

原告

西垣治建

被告

菊地律子

主文

被告は、原告に対し、一七五、〇〇〇円、及び、これに対する昭和三二年三月一日から、支払済まで、年六分の割合の金銭を支払わねばならない。

訴訟費用は、被告の負担とする。

この判決は、原告が、三〇、〇〇〇円を、担保として、提供するならば、仮に執行することができる。

事実及び理由

原告訴訟代理人は、主文と同旨の判決、及び、仮執行の宣言を求め、請求の原因として、次のように述べた。

一、原告は、美容材料卸商で、被告は、東京都において、美容新聞を発行し、かたわら美容師を営んでいる。

二、原告は、昭和三一年一一月中旬、被告の斡旋により、フランスの美容月刊雑誌ラ、コワイルド、パリーの輸入元である大阪市在住フランス美容友の会代表新宮原精善との間において、右月刊雑誌を富山県内において、一手販売契約をなすことゝした。そして当時斡旋人である被告の要求により前払金として、額面一七五、〇〇〇円、支払期日昭和三二年二月二八日、支払地富山市、支払場所北陸銀行中野支店、振出地富山市、振出日昭和三一年一二月三日、名宛人無記名の約束手形一通を振出し、被告に交付した。

三、昭和三一年一二月五日、原告は、被告と同道して、大阪市の前記新宮原方に行き、前記月刊美容雑誌について、代理店契約を結び、右新宮原と折衝して、代金等の計算の結果、同人に納入すべき前納金額は、一六八、〇〇〇円となつたので、被告は、持参した前記原告振出の約束手形を、これに充当することを希望したが、右新宮原は、現金支払を要求したので、原告は額面一六八、〇〇〇円の小切手を振出し交付し、右小切手金は、その後新宮原から、銀行経由で取立をなし、一二月一四日、原告において、支払をなした。

四、そこで、被告は、当然前記約束手形を原告に返還すべきであるから、原告は被告に対して、数次にわたつて督促したが、被告はこれに応ぜず、その中、訴外竹内寿恵から、原告は、右約束手形に基き、東京地方裁判所に同庁昭和三二年(ワ)第四九二七号約束手形金請求事件として、訴を起された。

五、右訴状によると、前記手形は、原告から被告宛に振出し、被告から昭和三一年一二月五日訴外永車菊野に裏書譲渡され、同人から訴外竹内寿恵に白地裏書されたことになつており、一七五、〇〇〇円、及び、これに対する昭和三二年三月一日から、支払済まで、年六分の割合の金銭を訴求しており、昭和三二年九月一四日が第一回口頭弁論期日に指定されている。

六、右手形は、原告としては、被告に対しては、支払の義務がないものであるが、譲受人である竹内寿恵に対しては、手形振出人として、支払わねばならないのであつて、被告の不法行為によつて、手形金一七五、〇〇〇円、及びこれに対する昭和三二年三月一日から、支払済まで、年六分の割合の金銭を、訴外竹内寿恵に支払わねばならぬ損害を被るに至つた。

そこで、被告に対し、この損害賠償を求めるため、この訴を起したものである。

被告は、適式の呼出を受けながら、口頭弁論期日に出頭せず、答弁書、その他の準備書面も提出しないので、原告の主張事実を自白したものとみなすべきであり、右事実によれば、原告の請求は、正当であるから、これを認容し、訴訟費用については、民事訴訟法第八九条、仮執行の宣言については、同法第一九六条を適用して、主文の通り判決する。

(裁判官 斎藤寿)

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